意味・由来
「虻蜂取らず」(あぶはちとらず)
【意味】
「虻蜂取らず」とは、二つのものを同時に手に入れようとして、結局どちらも手に入らないことを表すことわざです。欲張って複数の目標を追いかけた結果、すべてが中途半端に終わってしまう状況を戒めています。一つに集中することの大切さを教える表現です。
【由来・語源】
このことわざの由来には複数の説があります。最も一般的なのは、蜘蛛の巣に虻と蜂が同時にかかったとき、蜘蛛が両方を捕ろうとして結局どちらも逃してしまったという説です。また、虻と蜂の両方を追いかけて捕まえようとしたが、どちらも捕れなかったという解釈もあります。いずれにしても「二つの獲物を同時に狙う愚かさ」を描いた表現で、江戸時代から広く使われてきました。
【使い方のポイント】
計画の段階で「欲張るな」と忠告するとき、あるいは結果的に失敗した場面を振り返るときに使います。似た意味の「二兎を追う者は一兎をも得ず」(ID:17)と比べると、「虻蜂取らず」のほうがやや口語的で日常会話に馴染みます。ビジネスシーンでは戦略の選択と集中を論じるときに効果的です。ただし、挑戦して失敗した人に対して使うと追い打ちになるため、タイミングには配慮が必要です。
【例文】
《ビジネスシーン》
新規事業と既存事業の立て直しを同時に進めようとした結果、虻蜂取らずでどちらも成果が出なかった。次の四半期は既存事業の収益改善に経営資源を集中させる方針だ。
《日常会話》
転職活動しながら資格の勉強もして、おまけに副業も始めたら、全部中途半端になっちゃった。虻蜂取らずとはこのことだよ。
《作文》
受験において「虻蜂取らず」にならないためには、志望校を絞り込む勇気が必要である。あれもこれもと手を広げるよりも、限られた時間を最も合格可能性の高い目標に集中させることが、結果として最善の選択となる場合が多い。
【類似表現との違い】
「二兎を追う者は一兎をも得ず」(ID:17)はほぼ同義ですが、西洋由来の表現であり、ややフォーマルな印象があります。「虻蜂取らず」は日本固有の表現で、より庶民的な響きがあります。「欲張りは損をする」はもっと直接的で教訓的。「大欲は無欲に似たり」は欲が大きすぎて何も得られない様子を哲学的に表現しており、「虻蜂取らず」より抽象度が高いです。
【豆知識】
虻(アブ)と蜂(ハチ)は見た目が似ていることがありますが、生物学的にはまったく別の昆虫です。アブはハエの仲間(双翅目)で、ハチはハチ目に属します。アブは刺すのではなく皮膚を切り裂いて血を吸い、ハチは毒針で刺します。このことわざでは両者がセットで扱われていますが、それは「飛んでいて人を刺す厄介な虫」という共通イメージが庶民の間にあったためでしょう。なお、「虻蜂取らず」を略して「あぶはち」と言うこともあります。
使い方・例文
今回のプロジェクトは「虻蜂取らず」を胸に、チーム一丸となって取り組んでまいります。
「虻蜂取らず」って昔の人はうまいこと言ったよね。
「虻蜂取らず」という言葉がある。この言葉は私たちに大切な教訓を教えてくれている。
クイズ
「虻蜂取らず」の意味として正しいものは?